住宅設計業界のセカンドオピニオン
 

住まいの考え方や建設方法、お金に関してなど、住宅に関する全ての相談窓口

 よく言われるように「住宅」は一生に一度の大きな買い物であり、失敗は許されません。通常、ハウスメーカーや設計事務所、工務店や施工会社に話を持ち掛けることが出発点となりますが、「契約」する必要に迫られるのではと不安が付きまといます。しかし、現状、家を建てようと考え始めた段階において、中立的な立場で相談に乗ってくれる団体や窓口は皆無といっても過言ではありません。そんな現状を打破し、建築業界においても士業のような相談業を根付かせたいと考えています。

 特に地方では設計事務所自体の馴染みが薄く、序列的には工務店や施工会社の指示で図面を書くだけ、申請を通すだけという状況にある事務所も多いと言います。ハウスメーカーが主催する住宅展示場を見学するのも一つの手段かもしれませんが、結局は家の細部を見るよりも営業マンの説明などを頼ることになってしまいます。こうした状況下で、自分たちの希望する家を建てることは難しいと言えるのかもしれません。そこで、私が事業の中心として取り組んでいるのが、「住宅コンサルティング」です。長年の経験を生かし、住まいの考え方や建設方法、お金に関してなど、住宅に関する全ての相談窓口として機能させます。

 とはいえ、建築の世界で形のないものにお金を払うということに、抵抗感を抱く人がいるのも事実。そのため、相談に応えた顧客が理想とする家の図面を作成。顧客がその図面を持って工務店などを訪れれば、話をするよりも早く自分たちの要望や意図を伝えることができます。建築については素人である一般人が、なんの用意もなしに話を具体化していくのは危険であり、運悪く悪質な業者に依頼すれば、都合のいいように話を誘導されてしまうこともあると思います。

建築コンサルティングは自分の仕事の理想の形態

私の家は古くから続く大工の家系で、自身も幼少の頃から父親の背中を見て育ち、家業を手伝うこともありました。そのため、成長するに従い自然と建築関係の仕事に就こうと考えるようになり、大学では工学部建築科に在籍。卒業後に1級建築士に資格を取得し、家業を継ごうと考えて父親の仕事を手伝っていました。しかし、自分の道を進もうと、考え新たに建築関係の専門学校で専任講師として働き始めます。やがて、現場経験の少なさを痛感し、建築士として講師業を辞して不動産会社へ転職します。

転職先の不動産会社では、商業施設や住宅などの設計に携わっていたものの、途中で配属転換となり管理部へ転籍。自分の希望とは異なる仕事でも真剣に取り組みますが、やがて進むべき道を違えているという意識が芽生えていきます。今から思えば不動産売買などについて貴重な経験を積むことができたと思いますが、その後は生まれ故郷である群馬県に戻り、ハウスメーカーの営業職などで経験を積み、41歳の時に桐生で独立をしました。

当初、1級建築士事務所でありながら業務は多岐にわたり、設計から施工まで全ての工程に関わってきました。顧客の要望を反映させた図面を自ら作成し、施工などを別々の業者へ依頼、その全てと顧客が契約するという分離発注方式で、費用の削減と建物のクオリティーを両立。それができたのも、家業が昔から続く大工であり、古くから付き合いのある施工会社などが存在していたからだと言います。また、紹介の他は飛び込みでの営業で顧客を獲得していくなど、これまでに得た経験を独立後にしっかりと生かしていきました。そうしたバックグラウンドが存在するからこそ、コマーシャルベースで流されている情報だけでなく、業界的な本音の部分を利害関係なくアドバイスできる存在としての自分があります。

「コンサルタント」という肩書の怪しさ

「住宅コンサルタント」ってどんなことをするの?どんなスキルを持っていればできる仕事なの?この問いかけにお応えしようと思います。

建築の知識ばかりではダメだし、建築資金に関わる費用やお金のことそして借り入れのこと、税金のこともアドバイスできなければいけないし、ライフアドバイザー的な営業センスも必要です。そうなると、人生経験豊かな自身も体験しているような人が適任かもしれません。また金融の世界にファイナンシャルプランナーという資格がありますが、そのような要素があるのではないでしょうか?人生の大きな買い物として、一昔前は「家・車・生命保険」などと言われていました。それだけに、人はいろいろと考え、アドバイスを求めるわけです。しかし、相談相手が自社の商品を売る営業マンに過ぎません。資格はその人を信用する公平中立な手形にはなるわけではありません。住宅も商品と考えればいっしょです。

「コンサルタント」の使命の一つは目先の損得を騙るのではなく、将来的な利益をもたらすアドバイスだと考えます。

瑕疵担保保険制度導入後何故か地盤が弱いとの報告で杭打ち必要との結果が多くなりました。何故でしょうか?設計者がこれぐらいは支障がないと判断しても、保険会社の保証(補償)を受けるにはやらなければなりません。設計監理者としての職域は必要ないも同然です。要するに制度的に設計・施工者の信用度はないということです。ちなみにこの周辺の家々は杭打ち工事をしているところはありません。

 
 
 コンストラクションマネージメント方式で造る住まい造り
 
設計者と建て主が一体となって造り上げていく直営方式の家造りです。コストの削減および希望を最大限叶えられるものです。
 
この手法で住まい造りをマネージメントしてきましたが、ここ数年で地場のビルダーをはじめちょっとした工務店も、ハウスメーカーに並ぶぐらいの精度の高い家造りをするようになった影響で私の方は最近パッとしません。
 
そうは言っても価格もリーズナブルで企業努力していると思いますので、しょうがないのかもしれません。 しかし、まじめにコツコツ努力してきた工務店は置いてきぼりの感じもしますし、いい加減な会社が営業力主体で仕事をとっているのも現実です。そろそろ、本腰を入れ直して顧客開拓をあらためてしていかねばと思います。設計事務所も住まい造りの窓口ですよ、と強くアピールしていこうと思います。

最近になって、依頼が何軒かあります。設計を頼みますというのではなく、建物自体を面倒見てくれませんか?という依頼です。設計・監理はもちろんですが、業者に対する対応および全体的なマネージメント業務です。これこそが、住宅版のコンストラクションマネジメント(CM)という依頼方法です。本来、設計事務所が直接窓口になって受ける理想の建築方式です。

ともあれ、そこには確固たる人間関係が必要です。メーカーの営業トークの中に必ず出てくる言葉ですが、これは、かたちとなる前に結ぶ建築業界特有の契約方式の請負契約自体が施主・工事者の信頼関係にのとった不確定要素がある所以のためです。

「設計事務所の住まい造り」って何なんだろう? 最近は「不景気にも関わらず、不景気だから」?いろいろと住まい造りも面倒になってしまったと感じるのは私だけでしょうか?

基本的に面倒なことはなるべく避けたい私にとって、長期優良住宅だのエコ住宅だの行政主導の家造りは、申請する書類もそうだけれど結局個人の大工・工務店のレベルアップを狙ってハードルを上げふるいにかけているに過ぎない。いわゆる大工・工務店潰しの何ものでもない。
 
年間着工件数が80万戸を切った現実は、まさしく業界の生き残りを賭けなければならないことを意味している。まあ、工務店相手に仕事をしている設計事務所とっては、まさしく廃業しろということである。