建築コラム:中古住宅耐震診断業務 |
[木造住宅耐震診断の流れ及び補強工法]
*耐震診断から耐震補強工事の流れ*
その1
耐震診断を行う。
耐震診断は、一般的に「木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づき行います。
その基準は①建築基準法施行令第3章及び第5章の4の規定または②地震に対する安全性に係る基準のいずれかによります。
●予備調査:設計図書や、増改築の有無の聞き取りをします。
●現地調査:現地にて建物の現況を調査します。
●耐震性能評価:住宅の耐震性能を評価します。
評点1.5以上:倒壊しない。 評点1.0以上1.5未満:一応倒壊しない。
評点0.7以上1.0未満:倒壊する可能性がある。
評点0.7未満:倒壊する可能性が高い。
チェックポイント
住宅の劣化状況や問題点などを耐震診断の結果と合わせて具体的に洗い出す。
その2
耐震改修計画を立てる。
他の改修と抱き合わせて計画すると効率が良い。
① 外壁改修と一緒に行うと工事単価が下がる傾向にある。
② 内壁改修例えば押入内からの補強では工事がしやすいため、工事単価が下がる可能性がある。
③ 屋根葺き替え工事は建物重量を軽量化することで耐震性を増す可能性がある。
④ 基礎増し打ち補強工事で一体的な建物強化を図る。
その3
具体的な耐震補強工事の選定を検討する。
① 開口部を調整して偏心を改善する。
② 柱頭・柱脚の接合方法を変更する。
③ 構造用合板で耐力不足を改善する。
④ 筋違い端部を金物接合にする。
⑤ 筋違いを追加する。
⑥ 断面の大きな筋違いにする。
⑦ 屋根を軽量化する。
⑧ 火打ち梁を追加する。
⑨ 劣化部分の更新。
⑩ 基礎を補強する。
*住宅の耐震補強の工法について例を挙げることにします。*
一般的耐震改善の具体的な方策は下記によります。
「壁の補強」工法の種類
1.耐震+制震SDU工法(イーメタル株式会社:愛知県)
特殊パネルで補強する。
2.かべつよし(エイム株式会社:埼玉県)
壁補強
3.採光・通風・意匠性を重視し、快適さと耐震性能を両立することで耐震化の促進を図る。(AGCマテックス株式会社神奈川県)
4.コボット・ステンブレースシステム(株式会社国元商会)
壁補強・床補強・接合補強
5.ダイライト耐震かべ かべ大将(大建工業株式会社:大阪府)
天井・床を壊さないカンタン工事でOK。費用も安く工期も短くなるため、耐震リフォーム時の施主の負担を軽減。
6. パワーウォール(日本耐震防災事業団:東京都)
外部からの工事により、居住しながらの施工を可能にし、安価、短工期で、しかも高い耐震強度を確保することを目的にする。
7.荒壁パネル耐力壁工法(株式会社丸浩工業:京都府)
面材耐力壁による、建物の保有耐力の向上
8.タイガーグラスロック耐震壁(吉野石膏株式会社:東京都)
既存木造住宅の内壁補強
9.吸震工法壁柱(大阪府木材連合会:大阪府)
短期間で費用を抑え、簡便に部屋の改修工事と併せて行える耐震補強。
10.ニチハ耐力改修面材「あんしん」かべ強化 耐震リフォーム(ニチハ株式会社:大阪府)
準不燃材である無機質系耐力面材「あんしん」の直貼りの耐力壁用面材とし、耐震性を向上させる。
「接合部」の補強の種類
1.後付けホールダウン金物「ミニガード」(株式会社シーエムシー:大阪府)
接合部の不備による「柱抜け」を防止
「基礎」の補強の種類
1. CFP-接着工法(株式会社地研工業:大阪府)
基礎補強
2. タフベースアールエフ33(三栄商事株式会社:群馬県)
木造住宅基礎の耐震補強
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/n254878430
設計士のよもやま建築コラム
① 安心安全の一つの基準 「耐震等級」について
住宅の品質確保に関する法律、いわゆる「品確法」で定められている住宅性能表示制度の1つあるのが「耐震等級」です。また、中古住宅などの既存建物についても耐震診断を行い「耐震性」の判断をするときの基準ととして用いられるのが「耐震等級」です。「耐震等級1」とは、「建築基準法」に定める対策がなされ数百年に一度の大地震でも倒壊・崩壊しない、数十年一度の中地震でも倒壊しないレベル。「耐震等級2」は、耐震等級1の1.25倍の対策がなされているレベル。「耐震等級3」とは、耐震等級1の1.5倍の対策がなされているレベルとなっています。
<!--[if !supportLists]-->② <!--[endif]--> 建築基準法で求められる木造住宅の耐震性について
木造2階建以下の一般的な住宅の耐震基準については、建築基準法の仕様規定という項目の中で定められています。この規定は、一般的な呼称で言われている「建築物の構造計算」と呼ばれるものとは違います。この仕様規定は簡易的な計算による仕様ルールと言ったところです。(簡易的といっても計算は建築士であればだれでも出来るというわけもありません。)具体的には、壁量計算、四分割法、N値計算等といわれる算定方式でその安全性が確認される仕組みになっています。
ここでもう一つ、この仕様規定は「地震力」のみではなく「風圧力」に対しても検討します。地震力より風圧力の方が筋違いなどの入ってる耐力壁を多く入れなければならないことが多い場合もあります。
③ 建築基準法の地震力に対する耐力壁(筋違い等を入れた壁)の数量の基本的な考え方
地震力に対する必要壁量の算出については、次のように算出します。
地震力に対する必要壁量=床面積×床面積に乗ずる数値で計算します。「床面積」は見下げ面積で、通常の建築基準法に準じて算出している床面積のことだと思ってください。「床面積に乗ずる数値」とは、建築基準法施行令46条に規定されており、計算する木造住宅の屋根仕上げにより「重い屋根」、「軽い屋根」階数により「平屋建て」、「2階建ての2階」、「2階建ての1階」ごとに必要壁量の数値が決められています。
単位はcm/㎡です。ちなみに「床面積に乗ずる」とは床面積に掛け算してくださいという意味です。この数値は、屋根仕上げが重いほど大きくなり、建物規模が大きくなるほど数値も大きくなります。ここが重要で、建物重量が大きくなると作用する地震力も大きくなるため、必要壁量が多くなります。よって、存在壁量を多めにします。これを偏って解釈されていることが多く、「瓦屋根は重量が大きくなり地震に弱い!」となってしまいます。これは大きな間違いです。瓦屋根は重量が大きくなり地震力が多く作用します。なので耐力壁を多めに配置して安全性を確保しましょう」となるのです。決して瓦屋根の木造住宅が地震に弱いわけではありません。
<!--[if !supportLists]-->④ <!--[endif]-->「建築基準法」について
法律の体系は、法律、政令、省令、告示そして自治体の条例といったような体系になっています。その根幹の法律が建築関係では建築基準法になっています。現在の建築基準法が制定されたのは昭和25年の1950年です。かれこれ67年というから、それなりの重みをもっています。その中で、耐震については、1981年と2000年に大きな見直しがあったので、このラインが建物の耐震に関わる線引きです。すなわち現行の法律に沿わない建物というわけです。それを建築の法律では「不適格建築物」といいます。是正勧告を受ける違反建築物と一線を隔す用語です。
⑤ 築1981年以前と築1982年~2000年の木造在来軸組工法で建てられた建物の具体的な耐震性能について
築1981年以前に建てられた建物は、実質耐力壁の量を2倍にしないと現行の法規をクリアできません。だから、要注意なのです。1982年~2000年までに建てられた建物は、耐力壁の壁量自体は満足しています。しかし。耐力壁を建物の形状に合わせてバランスよく配置しているかというチェック項目が導入されそれをクリアすれば一応OKですが、今までにない「ホールダウン金物」が追加されました。この金物が地震に対して非常に有効に働くことが先の2011年の東日本大震災で実証されています。
⑥ 今までの耐震診断業務を通じて感じること
耐震診断をするにあたって、これまでの中古住宅の案件で確認申請の書類及び図面が無いことに驚かされます。土地や建物の権利証書は大事に保管するけど、図面は関知しなく大事にされていない実態を多く見ます。そこで、業務として現地調査を行い図面を起こす作業をするわけです。これは木造建築物を自ら設計し図面を描く設計士でなければわからない部分が存在します。
手前みそになりますが、キャリア30年の私でなければ踏み込めない領域と自負しています。
<!--[if !supportLists]-->⑦ <!--[endif]-->設計者の心理で筋違いの位置を決める
建物に耐力壁をどこに設けるかは設計者の裁量です。そこで、どのような心理で耐力壁の位置決めするのでしょうか?まずは、バランスよく隅角部に配置する。そして、建築基準法をクリアするように経済的な配置をする。ここで、この「経済性」というのが問題なのです。どういうことかというと、決して余分必要以上に筋違いは入れないのです。耐震性能表示を性能2レベルには言われない限りしません。設計をやる人のこれが習性です。
<!--[if !supportLists]-->⑧ <!--[endif]-->耐力壁が不足する間取りとの関連性
一般的に東西に長手の敷地の時、LDKなどを広くしたいという要望があるとき15帖や20帖といった空間を取るケースに1階南北方向に壁が取れないことがままあります。こんな場合に耐力壁の壁量が基準の1をクリアするものの1.1前後になったりします。どうしても、間取り優先で施主との話が進み構造はどうにかなるだろうといったことが一般的だからです。ある意味在来軸組工法は、融通性のある建て方であるため、そのようなことになるわけです。
⑨ 木造住宅の構造を考えるときのポイント
ずばり下記の3つのポイントです。
・建物形状の「偏心率」
・2階壁の「壁直下率」
・壁量の「余裕度」と「建物4隅の釣り合い比」
⑩ 一般的耐震改善の具体的な方策
耐震診断をしてその結果、もし安全に抵触していると出たら、
どのような対策を講じればよいのでしょうか?その具体的な
一般的耐震改善の方策は下記のとおりです。
① 開口部を調整して偏心を改善する。
② 柱頭・柱脚の接合方法を変更する。
③ 構造用合板で耐力不足を改善する。
④ 筋違い端部を金物接合にする。
⑤ 筋違いを追加する。
⑥ 断面の大きな筋違いにする。
⑦ 屋根を軽量化する。
⑧ 火打ち梁を追加する。
⑨ 劣化部分の更新。
⑩ 基礎を補強する。
この中から現状できるものをチョイスすればよいのですが、
その優先順位はというと、現実的には③~⑦・⑩となります。
⑪ ホールダウン金物について
行政は大地震が起こるたびに住宅の構造仕様を変えてきました。
「阪神淡路大震災」の時は、木造建築の構造仕様や安全性の基準
変更を行い、木造の簡易的な構造耐力計算の追加措置として建物
の四分割検討すなわち、建物の四隅の筋違バランス算定を導入し
て耐力壁の強化をしています。そして、基礎・土台・柱を一体化
するホールダウン金物に代表される、継手および仕口の金物の仕
様規定を細分し多様化させています。これらは、現在も適用され
周知徹底されています。その後はさらに「瑕疵担保保証」なる保
険制度を導入し、施工者の技術水準を底上げし、悪質業者の排除
を目的にした業界洗浄をしてきた経緯があります。
さて、そこで改めて現代の住宅の基礎の標準仕様はどうでしょう
。ふた昔前の布基礎ではなくて、建物の外力・自重を均等に支え
るベタ基礎がスタンダードになっています。もちろん鉄筋が十分
配筋された重装備です。その上鋼管杭でも打設したら、もう鬼に
金棒状態です。しかし、杭工事なる地業を含めたら小規模な住宅
においては、工事費の15パーセントを超えてしまうなんてことも
あります。何ともため息が出てしまう状況で、少々構造過多状態
かもしれません。
参考図面
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/img.p-kit.com/space-j-planing/1457747544079818600.pdf
上記参考図面+求積図+軸組計算+24時間換気図一式作成(A3版15枚程度)
15万円 (税込) です。(構造法規チェックをして図面完成しますので安心)
確認申請用必要図面:敷地図・配置図・平面図・立面図(4面)・面積求積図・求積表・筋かい壁量計算図・N値計算・24時間換気設備図です。
四号建築物の小規模の店舗・事務所・併用住宅といった用途については、排煙検討・建具表・展開図が必要になるケースが考えられますので、図面枚数も20枚程度が見込まれ総額20万円程度考えて下さい。(実施設計レベルにも使用可能です。)